Finland

 アコーディオン教育研修レポート in フィンランド

北欧の国フィンランドは、アコーディオンがとても盛んな国です。
2011年3月にヘルシンキ近郊Espooという街にある音楽学校と、ヘルシンキから200kmほど離れたIkaalinenという小さな町で開催された子どものためのアコーディオンコンクールを見学してきました。その時撮った写真と共にレポートにしましたので、ご覧下さい。


  • Espoo音楽学校

    Espoo音楽学校
    Espoo音楽学校のパンフレット

    Espoo音楽学校は、ヘルシンキからバスで15分ほどの所にあります。
    1963年からあるこの学校には、2000人以上の子ども達が通い、高い音楽教育を受けられるフィンランド最大の子どものための音楽学校です。
    0~7歳までの子ども達は、歌を歌うことやリズム遊び、楽器に触れてみる、などの基本的な音楽知識を得たのち、6~10歳の間で楽器の個人レッスンを始めるそうです。
    他にも、Tapiola Youth Symphony、PopやJazzの学科、フォークミュージックオーケストラなど、かなりの充実ぶり。

    リハーサル風景
    今回のフィンランド滞在中に、お世話になったのが写真の奥で指揮をしているEero Nissinen氏。
    エッセンの大学で一緒に勉強した仲間でもあります。
    この日は、この音楽学校のオーケストラのリハーサルがあり、バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスの他に各木管楽器とアコーディオンも加わってかなり大きな編成のオーケストラの練習を見学しました。
    子どものための音楽学校で、ちゃんとしたリハーサル用の大部屋があり、かつアコーディオンもちゃんとオーケストラの一員として加えられていることに、まず感心しました。
    子ども達にとって、他の楽器と一緒に弾く(合わせる)ということはとても重要ですし、それに皆とても楽しそう!

    他にも、小学校低学年ぐらいの女の子3人でのグループレッスン、アコーディオンとクラリネットのデュオのレッスン、高校生の女の子達の個人レッスンなどを見学させてもらいました。
    印象深かったのは、小さな子ども達へのレッスンで、時々楽譜を使わずに、耳だけで音を拾って演奏するというレッスン方法。
    かなり小さな子が、音を探りながら最後には1曲を暗譜で弾けるようになっていました。

  • Ikaalinenアコーディオンコンクール

    Ikaalinen
    ヘルシンキから車で約2時間の所にあるIkaalinenは、
    本当に小さな町でした。
    スーパーが2つ、レストランが1軒、スパホテルが1軒ありますが、それ以外は畑と森。車がなくては、動けない・・・そんな町でした。
    けれど、ヨーロッパでアコーディオンが盛んな町というのは(例えばドイツ・イタリア・フィンランド)、本当に小さな町なんです。
    この年は雪が多く、そして3月中旬だというのに気温は-5度。けれど、光はやはり春を感じさせます。


    コンクール会場
    昔は映画館だったというこの建物が今回の
    コンクール会場です。Ikaalinenには、この建物の近くにアコーディオン研究所があり、沢山の楽譜・CD・教則本・書籍が保管・販売されています。
    とにかくアコーディオン先進国のフィンランド。
    私が特に今回の滞在中に情報収集しておきたかったのは、レッスン用の教則本についてでした。
    アコーディオンにはスタンダードベースとフリーベースがありますが、フィンランドではそのどちらも小さな頃から習います。1台でそのどちらも演奏できるシステムが入っているアコーディオン(コンバーター)は、小さな子どもには重過ぎるので、スタンダードベースとフリーベースの2台のアコーディオンを持っている子もいました。


    小さなアコーディオン奏者
    コンクールは年齢によって6つのグループに分けられています。
  • A18 1992-1994
  • A 1995-1997
  • B 1998-1999
  • C 2000-2001
  • D 2002-2003
  • E 2004以降

    今回全カテゴリーを通じて演奏されたのは、スウェーデンの作曲家Torbjörn Lundquistの作品。
    10歳に満たない子ども達が、自然にいわゆる「現代曲」を弾いていました。
    アコーディオンにとって、現代曲とは切っても切れないものですが、こんな小さな頃から慣れ親しんでいれば、変な拒否反応や偏見もなく、ただ純粋に「音楽」として接することができるだろうなぁ、と思い、これは見習わなければいけない点だなと思いました。

    そして年長カテゴリーでは、バロック作品(スカルラッティのソナタ、バッハのプレリュードとフーガ)、アコーディオンのためのオリジナル作品、フィンランドの作曲家Matti Murtoのポルカ集から1曲などが課題として指定されていました。
    本当に様々な時代の異なったジャンルの曲が次々に演奏されて、そのレベルも非常に高く、違う演奏者が出てくるたびに眼を瞠りました。

    そして何といっても最年少カテゴリー!
    2004年以降に生まれたちびっ子達の演奏は、とにかく「可愛い!!」につきます。
    アコーディオンを始めたばっかりかな?という子から、大人顔負けのテクニックで素晴らしい演奏をする子まで・・・。
    フィンランドという国の、子どもへのアコーディオン教育の質の高さを一番実感できました。



    表彰式
    表彰式では、全員に賞状とトロフィーが贈られました。最年長グループ(A18)の優勝者は、来年上海で開催される国際アコーディオンコンクール「Coup de Mondiale」への出場権が与えられます。
    優勝したのは、Eeroの生徒でしたので、彼は「これから、また上海への準備で忙しくなるぞ・・・大変だぁ!!」と言いつつも、可愛い生徒が優勝してかなり嬉しそう。そして、このコンクールの存在意義についても、こう語ってくれました。

    「このコンクールで、僕はとにかく全員が、参加してよかったなと思えるようにしたいんだ。演奏技術を競うということだけではなく、アコーディオンを弾くことへの喜びを感じてほしい。
    僕の生徒が弾く時は、僕もかなり緊張したけど、子ども達はみんなレッスンの時より数倍上手に弾いてくれたよ!子どもって素晴らしいね!」


    今回の旅では、フィンランドのアコーディオンレベルの高さを目の当たりにし、お手本にしたいところも沢山ありました。なによりも、教材の多さは本当にうらやましい!
    そして、良い演奏家が多いということは、良い先生も多いということ。
    Eero Nissinen氏や、Espoo音楽学校・コンクールで出会った先生達は、とにかく子どもが好きで、アコーディオンが好きでその情熱がこれだけハイレベルな音楽教育を可能にしているんですね。
    たった1週間の研修旅行でしたが、収穫はかなり多く、この経験を今後日本で必ず生かしたいと思っています。